第19回 有機を楽しむ

オーガニックについては、残念ながら日本は欧米に比べてかなり遅れている。

認証に関するハードル、生産者側の技術や経済面でのハードル、行政の支援の足りなさなど、理由は多々あるが、オーガニックを求める消費者のボリュームがまだそれほど大きくないことも事実だ。

それでも、新しいことに挑もうという若い世代が出てきていることが頼もしい。

従来とは違うやり方で育て、従来とは違う発想で販路を切り開く。

例えば、自分で販路を切り開くためには、有期農産物の魅力発信が重要になる。

自分の考え、描いている在りたい姿を真っ直ぐにちゃんと伝える、そんなセンスも必要だ。

企画力も行動力も必要だ。

新しい時代を切り開くためには、これからを生きる若い世代の力、そして先人たちの経験からくる知恵、そのどちらもが大事だ。

それぞれの役割がある。特に上の世代には、知恵を貸したり、応援したり、経験値を提供したりといった仕事がある。

過疎地に移住して有機農業を志す若い世代、彼らの強みはそのネットワーク力だ。

いつでも・どこでも・誰とでもつながれる、そんな今を生きる彼らの発信力とつながる力が、これまで困難といわれていたことを可能にする。

つながった仲間と共同でやることで、マイナス要素をプラスに変えてしまう。

農業だけではなく、その周辺にまでアイデアが及び、地域を巻き込み、啓蒙やPRもやってのける。

例えば、体験プログラムでファンにしてしまう。そしてリピーターが生まれる。裾野が広がっていく。思いが伝播し、刺激を受け、有機農産物を使って何かをしたいという人が出てくる。

こうして、1粒の種が色とりどりの花を咲かせる。

アイデアがアイデアを呼び、どんどん分けつし、実っていく。

有機農業に取り組むことで、いろいろなことが見えてくる。

仲間もできてくる。

「おいしい」「ありがとう」の声が聞こえてくる。

作物が元気な手応えがある。

取り巻く自然が生き生きとしていて、生きものたちが普通に当たり前に暮らせているのが分かる。

そして、「有機は楽しい」と思う。

そんなシンプルなことが、案外この世の中を動かすのかもしれない。