第17回 「今日の朝ご飯、なあに?」

突然だが、皆さんの今日の朝ご飯はどんなメニューだっただろうか?
ご飯にワカメと豆腐のみそ汁、焼き魚、卵焼き、納豆、そして漬け物とくれば、これはかなり理想的な朝定食だろう。トーストとコーヒーに目玉焼き、現代ではこちらのほうが定番かもしれない。

和食の一汁三菜は健康的で理想的な食事として世界的に評価されている。
健康を考えれば、「目指せ!一日30品目」とか、「まごはやさしい」(まめ・ごま・わかめ・やさい・さかな・しいたけ、いも)を目安にとかいろいろあるが、忙しい現代人、分かってはいてもなかなかそんなふうにはいかないのが現実だ。
朝ご飯は一日の活力の源、しっかり食べて元気にいきたいものだが。

今朝のメニューに話を戻そう。思い起こしてみると、素材の一つ一つにいろいろな問題が詰まっていることに気付く。

まず、ご飯。
その主食であるはずの米の消費量は、ピーク時の半分以下になっている。
米は日本人の原点のはずなのに。その原因は食生活の変化だ。
その一方で、牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳・乳製品、油脂類の消費量は大幅に増加した。

家畜は毎日トウモロコシや牧草などの餌をせっせと食べる。その飼料のほとんどは外国からの輸入。だから、飼料自給率を考慮に入れると畜産物の自給率は随分低い数字になる。
油脂類の原料の大豆や菜種などもほとんどが輸入だ。その消費が増えれば、当然、自給率全体の低下につながる。
つまり、自給率の低い肉類や油脂類の消費が増えたことで、食料全体の自給率が低下してきたというわけだ。

みそ汁を見てみよう。みその原料は大豆。豆腐の原料も大豆だ。
国産大豆か? 輸入大豆か? 遺伝子組み換えの問題も気になる。
大豆の自給率は1割を下回っている。輸入大豆のうちの9割は遺伝子組み換え大豆だ。
日本では豆腐も納豆も味噌も、遺伝子組み換え大豆を使っていた場合には表示義務がある。そういえばパッケージに「遺伝子組み換え大豆不使用」と書いてあったことを思い出す。
しかしこちらは任意表示で、今年の4月から「遺伝子組み換えでない」表示の基準が厳しくなった。消費者としてはこの動向も気になる。

同じ大豆を原料とする食品であっても、しょうゆには表示義務がない。加工の際にDNAやたんぱく質が分解され、検証できないためだという。

みそ汁の具のワカメ。これは天然ものか? 養殖ものか? どこで、どんなふうに加工されてきたのだろうか。
切り身で買ってきたこのシャケは、どこの海でどんな暮らしをしていたのだろうか。
卵焼きは、どこかの養鶏場で飼育されているニワトリが産んだ卵だ。さて、どんな環境だったのだろうか。

そんなことをあれこれ考え始めると、味わうどころではなくなる。
それもなんだかなあ……と思うが、まあ、たまには目の前の食卓に並ぶまでを想像して味わい方を変えてみることにしよう。
ここに並んだ一つ一つの背景に生産者の生活がある。どんな人がどんなふうにつくったものなのか、想像すると楽しくなってくる。その一方で、体に取り込むものだけに不安にもなってくる。
願わくば、愛情をいっぱい注がれて届いた健康なものであってほしい。
うん、きっとそうに違いない。
そう思ったら、もっとちゃんと味わって食べなくてはと思わず背筋が伸びた。

パンとコーヒーの朝。
トーストの小麦はどこから来たのか。コーヒー豆はどこから来たのか。フェアトレードの問題にも頭がいく。皆が幸せであってほしいものだ。

1回の朝ご飯にもこんなに考察のタネが詰まっている。
さて、皆さんの今日の朝ご飯のメニューは?