第14回 おいしい秋、見つけた!

記録的な猛暑となった今年の夏。大雨による災害があちらこちらで起きて、「線状降水帯」はもう耳慣れた言葉になってしまった。

こんな異常気象では、「暑さ寒さも彼岸まで」なんていう言い方はもはや時代に合わなくなっただろうと思ったら、それが案外そうでもない。朝晩はめっきり涼しくなって、時には肌寒さを感じて目が覚める。

風や光の色、空気も何となく秋の気配だし、お店には芋・栗・カボチャなど秋の味覚が並ぶようになって夏野菜と選手交代。なるほど、もうそんな時期か。

ついつい食べ物のことばかり考えてしまうが、何しろ“食欲の秋”なのだ。

秋の味覚とくれば、秋刀魚や秋鮭。梨やブドウや柿といった果物もおいしいし、キノコ類も秋の食卓には欠かせない。

そして、なんといっても新米だ。

ふっくらと炊きあがったつやつやのご飯は、もうそれだけで大ごちそう。秋の味覚を一緒に炊き込めばまた格別だ。

かつて、日本人の食生活は「ご飯」が中心だった。1960(昭和35)年度の統計によると、1人当たり1日に茶わん5杯(米315グラム)のご飯を食べていた。1日のエネルギーの48%を占めていたのだ。

ところが、米の年間消費量は1962年の118.3キロをピークに減り続け、2022年には半分以下になってしまった。

今、日本の食料自給率は38%。つまり、6割以上を海外からの輸入に頼っているということだ。米の自給率はほぼ100%とはいうものの、米農家が減り続けているから事態は深刻だ。

何しろ米農家の数は50年間で7割も減少し、高齢化や後継者不足で今なお減り続けているのだ。

米の生産量が減ってしまえば、日本の食料自給率はさらに低下する。輸入に頼るということは、天候や国際情勢の影響を強く受けるということで、有事の際に食料不足に陥ることも考えられる。

今だって、日本は化学肥料の原料のほとんどを輸入に頼っているため、中国の肥料輸出規制やウクライナ情勢による価格高騰で、化学肥料を使っている農家はコスト高コストにあえいでいる。

食料の長期的で安定的な供給のためにも、食文化を伝える意味でも、日本にとって米づくりはとても重要だ。

学校給食での消費奨励や食育、米を使った新商品の開発など、米の消費量増加に向けた取り組みも行われている。そして、小麦アレルギーや健康志向も視野に入れたグルテンフリー食品として、米粉の需要拡大には輸出も含め大きな期待が寄せられている。

環境に負荷をかけないという考え方が世界的な潮流となっている中で、求められるのは持続可能な米づくりだ。日本でも化学肥料を使わない有機栽培への挑戦や、有機農業への大規模転換を目指す動きが始まっている。

生態系を壊さない。自然と共生する。微生物が土づくりを手伝ってくれる。その結果、しっかりと根を張り、茎は太く育ち、台風や大雨にも強い稲にとなるという。

今、日本の有機農業の耕作面積は全体の0.6%。有機栽培米が総生産量に占める割合はわずか0.1%だ。道のりはけわしい。

化学肥料によって起きた土壌劣化を元に戻すのは難しく、微生物などの生態系が戻るまでには3年から5年かかるという。移行期の作り手をどのように支えるか、国の支援策が鍵となりそうだ。

時代が生んだ新しい技術と、若い世代の発想やエネルギー、そして、長い営みの中で蓄積してきた普遍的な知恵。これらが融合したこれからの米づくり。その先には果たしてどんなおいしい秋の味覚が待っているのだろうかと、わくわくする。

(参考)
NHK「クローズアップ現代」2023年8月29日
JA全農 米情勢
農林水産省HP