人には数値では測れない背景の物語を想像するチカラがある。安全・安心を選び取る消費者のセンサーを侮ってはいけない。

タイパ、コスパの良さが求められる時代である。
しかし一方で、人は安心や安全を求め、
効率化や大量生産で失ったものを取り戻すために多大なエネルギーを費やしている。
なんだか大きな矛盾のサイクルに陥っているように思えてならない。
「心地よい」「おいしい」「使いやすい」「気持ちよい」「味わい深い」、
私たちは日常の中でこんなワードをよく使う。
これらの表現はとても曖昧だが、
誰もがそのほうが望ましいと思うだろう。
では、心地よさ、おいしさ、使いやすさ、気持ちよさ、味わい深さ、
こうしたものを測る物差しは何だろうか。
ものづくりの過程や結果で数字に表れるものは分かりやすい。
時間もコストも費用対効果も、
具体的にはじき出すことができる。
だが、「心地よい」とか「おいしい」の物差しは万人が同じではないし、
測るのも難しい。
いまやAIの時代となり、人間が苦手なことを代わってやってくれるし、
分からないことを聞けば瞬時に何でも答えてくれる。
相談相手にもなってくれる。
タイパ、コスパの塊でもある。
AIが学習しデータとして利用するのは人間が残してきた足跡だ。
それが瞬時に組み合わされて編まれた答えを、
今度は人間が便利に利用する。
だが、AIと人間は違う。
喜怒哀楽といった感情、それに突き動かされて発する行動、
その結果表現されたものは、AIがつくったものとは違う。
共感する心、想像力、創造する力、そして誰かのコピーではないその人にしかない個性、
そういったものは人間しか持ち得ないものである。
例えば野菜を選ぶときに生産者の顔が見える野菜を手に取るのは、
それが安心につながるからというだけではない。
単なるトレーサビリティーではない。
定量的なものだけでは説明がつかないものがあるのだ。
消費者は、有機認証マークは信頼のお墨付きだということを知っている。
だが、それだけで選ぶのではない。
手に取る消費者には、有機認証マークの背景にある物語を想像する力がある。
愛情や真面目さ、そして考え方や志といった、
数値で測れない、機械には代えられないもの。
それが安全や安心、そして未来を守るおいしさにつながることを知っているからこそ、
共感できるもの、確かなエネルギーを感じるものを選び取るのだ。
そうしたセンサーを人はちゃんと持っている。
そのセンサーの精度を侮ってはいけない。

有機の応援団 伊藤 真理
フリーライター ことなひまめ事務所代表
大学卒業後、会社勤めを経てライターとして独立
FMラジオ番組のエッセイ原稿、新聞社の特集記事や料理レシピ、経済誌の取材原稿、社内報のコラム・エッセイ等執筆多数
モットーはクリエイティブライティング、大切にしているのは「言葉」のチカラ
10年前、有機野菜が届く暮らしを始めてから見える世界が広がりました!
