第79回 “レンタルヤギ”参上!

昨年末、広大な土地の草刈りに「ヤギ」を投入したという話題に興味をひかれ、気になっていた。
高崎量子技術基盤研究所の研究施設での話である。
森林に隣接した敷地は31万平方メートルという広さで、建屋を除く部分の草刈りに毎年多くの人手とコストがかかっていた。
そこで、ある会社から試しにヤギをレンタルしてみたら、これが結構な効果を上げたというのだ。

除草をヤギに請け負ってもらう、なるほどうまいことを考えたものである。
もっと感心させられたのは、それがレンタル事業になっていることだ。
ヤギを貸し出している会社は既に幾つも登場しており、人にも環境にも優しいエコな除草ということで新しいビジネスになっているのだ。

考えてみれば、ヤギが草を食べるのは当たり前の普通の話だ。草食動物なのだから。
だがここで肝心なのは、「食べる」ではなく、「食べてくれる」という発想だ。
「食べてくれる」なら、食べてほしい場所でどんどん食べてもらったらお互いにハッピーである。
ヤギが草刈り機の代わりになってくれると気が付いたこと、そして、貸し出すという手法をとったこともあっぱれである。

ヤギに食べてもらえば除草剤を使わずに済むので、周囲や生態系への悪影響などといった心配がない。
機械を使わないので、エネルギーやCO2排出問題も心配ない。
何よりも、「ヤギ」と聞いただけでのどかなシーンが目に浮かび、何となく気持ちがほっこりしてくるではないか。

やってきた2匹のヤギは予想を超える働きぶりを見せ、せっせと草を食べ、わずか2週間ほどで敷地内の除草作業を終えた。
かかったコストは10万円ほどで、臭いによるトラブルなどもなかった。
それどころか、思わぬ癒し効果まで得られて大好評だったそうである。

それにしても、映像に出ていたヤギたちのなんとひょうひょうとしていることか。
彼らは人間の思惑など知る由もなく、マイペースで黙々と草を食べ続けている。
人間社会のごちゃごちゃなど知ったことではない。目の前に草があるから食べるのだ。
そして、時々「めええー」と声を出す。
間延びした、そのとぼけた調子がなんともたまらない。
一瞬、問題だらけの現代に生きていることを忘れそうになる。

そういえば『レンタネコ』という映画があった。
寂しい人たちの心の穴を埋めるためにネコを貸し出している女性が主人公である。
「寂しい人の心の穴を埋める」――なるほど、動物は癒しになる。
実際にセラピー犬が活躍していたり、イルカが自閉症や心を病んでいる人に寄り添ってケアをしたりしている。
動物たちは言葉を発しない。
だからこそ、私たちはさまざま勝手に想像しながらコミュニケーションを楽しめているのかもしれない。