2023年が暮れていく。
思い起こせばいろいろなことがあった。うれしいことも悲しいことも、楽しいことも腹の立つことも。一年を振り返ると、皆それぞれに感慨深いものがあるのではないだろうか。
『細雪』という映画がある。
谷崎潤一郎の小説を映画化したもので、一つの時代の終わりとともに滅びゆく旧家、その移りゆく時代を生きている四姉妹が織りなす四様のドラマが絡み合う、とても美しい世界。
過去に3度映画化されているが、1983年の市川崑監督による『細雪』のラスト近くで、岸恵子演じる長女・鶴子がこんなふうに言う。
「みんな、ええようにいったらええなぁ」
さらりと、たおやかに放った何でもない一言なのだが、これがとてもよいのだ。
全てを受け止め、包み込み、未来から差し伸べられた見えない手に皆の手をそっと渡してやるような、やさしくて、しなやかで、勇気の出る言葉だ。
そこの場面に至るまでにいろいろなことがあっただけに、胸にじんわりと染み入るセリフなのだ。
「みんな、ええようにいったら、ええなぁ」
コロナがあって、これまで当たり前だったことがそうではなくなり、戦争が起きて状況は世界は激しく揺れている。
AIの時代となり、人々の働き方も考え方も刻々と変化している。これからもどんどん変わっていくのだろう。
生きとし生けるものが「みんな、ええようにいったらええなぁ」、そうなるように願わずにはいられない。それぞれにとってええように、みんなが幸せであるように。
ふと、オーガニックの思想もそういうことではないかと思い至る。
そうなるように、まず知恵と力を持った人間が手を尽くさなければと。
2023年が暮れていく。2024年はどんな年になるのだろうか。