第11回 オーガニック志向は特別か?(その1)「世界のオーガニック事情」

今年の2月に最新版のオーガニックデータが公表された。有機農業の分野で世界をリードする研究機関FiBL(有機農業研究所)と有機の国連といわれるIFOAM(国際有機農業運動連盟)、そして、英国Ecovia Intelligence社がマーケティング調査を担当して2021年末までの状況をまとめたものだ。

それによると、20年前と比べて世界全体の有機農業取り組み面積が5倍近く、東京ドーム約1,220万個分も増えているというから驚く。総農地に占める有機農地の占有率は世界全体で1.6%。占有率が2桁の国が20カ国を超えたという。

日本はどうかというと、0.3%で世界116位。残念ながら、かなりの開きがあることが分かる。

ちなみに、世界で有機農業が行われている土地の3分の2以上は、牧草地として利用される「永年草地」だ。アジア地域では全有機農地の半分以上が小麦やコメなどの「一年生作物」だから、世界の傾向とは大きく異なる。日本は田畑の割合が高い。

小売売上高で見た世界の市場規模は約17兆4,720億円。アメリカとEU連合でその90%を占めるが、一方で、アジア地域でオーガニック市場が大きく成長していることも見逃せない。特に顕著なのが、中国、インド、韓国だという。

年間平均1人当たりのオーガニック商品消費額が最も高かったのはスイスで、約59,500円。2位はデンマークで53,760円。日本はといえば、2019年に農林水産省が発表したデータでは約960円。現在はもう少し増えているとしても、桁違いだ。

アメリカは健康意識の高まりからオーガニックマーケットが急速に拡大し、いまやオーガニック大国だ。オーガニック発祥の地ドイツをはじめとするヨーロッパ、そしてオーストラリアはオーガニック先進国といわれる。

しかし、「持続可能」がキーワードとなっている今、もはやどの国だって意識を向けないわけにはいかない。

日本には四季がある。春・夏・秋・冬と季節が巡る中で、古くから米や野菜を作り、魚を獲り、狩りをし、山の恵みを採取してと、自然と共に生きてきた。持続可能な社会を当たり前に営んでいたのだ。

それが、近代化とともに化学肥料に頼るようになり、人間が求めるように動物も植物も改変する技術を持ち、自然への畏怖の念を忘れてしまうほど便利なサイクルが回せるようになった。その結果迎えたのが、生態系の破壊、環境汚染、健康被害などの深刻な問題を抱える今の時代だ。

50年後は一体どうなっているのだろうか。地球は人間が住める環境であるだろうか。

50年後は次の世代が生きるすぐそこの未来だ。

日本もいつまでもオーガニック後進国でいるわけにはいかない。

(参考)

IOB jourbal 【2023年版】世界のオーガニック最新トレンドまるわかり!拡大する世界の有機農業とオーガニック市場を統計データで理解する 2023年3月31日

農林水産省「有機農業をめぐる事情」令和4年7月