第2回 有機は勇気

農業の世界ではモグラは厄介者らしい。巣の中に入った植物の根を傷付けたり切ったりしてしまうからだ。水田の畔を突き破って水漏れを起こしたり、益虫のミミズを食べたりと、なかなかのやんちゃ坊主だ。丹精込めて育てている作物を駄目にされたのでは憎らしくもなる。ちなみに農作物を食べるわけではない。かじった跡があるとしたら、それはモグラの穴を使ったネズミたちの仕業だ。というわけで、ネット上ではモグラ撃退方法がいろいろ紹介されている。

一方でミミズは、落ち葉や虫の死骸など腐敗しかけた有機物を食べて、粒状のフンをすることで土を肥沃にしてくれるから益虫と歓迎される。実は、モグラはニオイにとても敏感で、そんなミミズを求めて腐敗臭のする所に穴を掘ってミミズを捕まえる。益虫を食べ尽くされてはたまらない。こうしてモグラはたたかれることになる。

しかし、モグラにしてみれば、せっせと掘ったトンネルに侵入してくる作物の根っここそ大迷惑。取り除きたくなるのも当然というもので、モグラにも言い分があるだろう。厄介者、害獣と誰が決めたのかといえば、人間の都合で決めた人間の側の論理だ。

かつて、ジャズサックス奏者でミジンコ研究者でもある坂田明さんがこんなことを言っていた。「世の中に役立たずというのは存在しない。“役立たずという役割”なのだ」と。なんだかひどく納得した。腐敗しかけた有機物を食べるミミズがいて、ミミズを食べるモグラがいる。ミミズは土が良くなると、もっと地中深くの空気不足で有機物が蓄積しやすい所に住むようになる。それを狙ってモグラも穴を掘る。おかげで随分深い所まで空気が通るようになる。この連鎖でどんどん元気な作物が育つ土壌ができる。つまり、モグラはそこにいることで土の状態を教えていることになるし、土づくりを手伝っていることになる。どこを切り取って見るかによって違ってくるし、見える世界が変わってくるから面白い。

そもそも生命はみんなつながっている。人間も生態系の一員のはずなのに、もっとおいしいもの、もっとたくさん、もっと早くと、人間にとって望ましいものを求めて生態系のバランスを変えてしまった。化学肥料や品種改良、遺伝子組み換え作物と技術は進化したけれど、その結果、地球環境への負荷をかけ過ぎて危機的状況にあることが分かってきた。自然界には無数の生命がいる。私たちが踏みしめている大地の下にも、海や川の中にも。それぞれがそれぞれの役割をちゃんと発揮できて本来あるべき姿で健康に循環するように軌道修正する勇気が必要だ。有機は勇気ある選択なのだ。

有機は勇気ある選択なのだ!

(参考)
「有機農業の世界とコロナ 菌ちゃんふぁーむ代表・吉田俊道」『長周新聞』(2021.03.16)
吉田俊道ブログ 菌ちゃんありがとう「西日本新聞連載13話 にっくきモグラが味方に変わる方法」(2018.09.12)