第12回 オーガニック志向は特別か?(その2)「 脱!オーガニック後進国」

持続可能な食料システムの構築が急務であるわが国にとって、有機農業の推進はとても重大なテーマだ。
私たちに何ができるのか。何から始めればよいのか。
例えば、生きる上で最も身近な「食べる」という行為。そこに「有機」や「オーガニック」というまなざしを向けるだけで、行動が少し変わるかもしれない。

農林水産省の2017年の調査では、「有機」や「オーガニック」という言葉を9割が知っていたものの、「正確に知っていた」のは3.7%だ。9.0%が「有機」や「オーガニック」という言葉を知らなかったし、58.1%は「言葉は知っていたが、表示に関する規制があるとは知らなかった」というから、あまり喜んでもいられない。

有機食品に対するイメージについては、安全、健康に良い、理念に共感できる、おいしい、環境に負荷をかけていないといった納得の回答が並ぶ。その中で気になるのが「価格が高い」という声だ。確かに有機JASマーク付きの野菜は国産標準品(慣行栽培品全体)より価格帯は高い。

家計を預かる者としては、スーパーの野菜コーナーに立って逡巡することもしばしば。有機JASマークの付いた野菜を手に取り、他と見比べ、環境問題と財政問題の間で激しく葛藤することになる。

しかし、消費者への意識調査では、44.9%の人が「1割高までなら購入したい」と答え、27.5%が「2~3割高までなら購入したい」と答えている。つまり、一定の付加価値が市場に認められているというわけで、生産者にとってはビジネスのチャンスや可能性は大いにありそうだ。

新規就農者の中には有機栽培への興味や意欲のある人もいるし、慣行栽培をしている人でも支援や売り先などの条件が整えばやってみたいという人もいる。オーガニックへの関心は確実に高まってきている。

もちろん課題もある。栽培や管理に手間が掛かる、そこに割く人手が足りない。この最大のネックを解決するためにこれからAIが活躍してくれそうだ。
認証のハードルもある。オーガニックを付加価値としていかにブランド化するか。
そして政治的サポートも必要だ。欧州では生産者、製造者、研究者などへのしっかりとした公的支援があり、安心して有機農業に従事することができることが有機の広がりを後押ししているのだという。

「オーガニックってちょっと高いし……」、確かにそうだ。
「家計のために少しでも安いほうがいいし……」、全くもってそのとおり。
「神経質な人が買うんじゃないの?」、ちょっと違うけど、そう思うのも分からなくはない。

だが、自然と共生し、関わる全てがフェアである関係を築き、未来に負の遺産を残さない配慮をする、そんなオーガニックが目指す世界を知ると、一個人の利益を超えて皆がハッピーであるための適正な価格が見えてくる。
何事にも最初はたくさんの壁が立ちはだかり、乗り越えるべき山があるものだ。オーガニックが当たり前になる時まで、一歩、また一歩。

(参考)
IOB jourbal 【2023年版】世界のオーガニック最新トレンドまるわかり!拡大する世界の有機農業とオーガニック市場を統計データで理解する 2023年3月31日
農林水産省「有機農業をめぐる事情」令和4年7月