第21回 「お屠蘇」とはなんぞや

お正月といえば、お屠蘇。平安時代に唐から伝わり、宮中の正月行事からやがて庶民にも定着した風習で、一年の邪気を払い、長寿を願って飲む縁起物のお酒である。
といっても、正確にはお酒とはちょっと違うのだ。

屠蘇とは、何種類もの生薬をブレンドした「屠蘇散」を日本酒やみりんにつけ込んでつくる一種の薬草酒である。山椒や肉桂、桔梗や八角などなど、スパイシーな香りがするのはそのためだ。
かつては各家庭で大晦日につくり、元旦に無病長寿を願っていただくというものだったが、今はスーパーやドラッグストアでティーバッグのものが売っている。
アルコールの入っていないみりんでつくると、子供も飲める“ノンアル屠蘇”になる。

「お屠蘇」にはいろいろ作法がある。元旦のおせちを食べる前に飲むのが正しい飲み方で、屠蘇台、盃台、三段重ねの盃、飾り付きの銚子から成る“屠蘇器”という専用の器を使うのが正式。朱塗りや黒塗りなどの、結婚式で使われるあのセットだ。

というわけで、お正月といえばお屠蘇なのだ。
といっても、何杯も際限なく飲むというものではない。
「おせちもいいけどカレーもね!」というCMがあったが、酒好きとすれば「お屠蘇もいいけど日本酒もね」といったところ。
大手酒造メーカーの調査によると、おせち料理に合うお酒といえば日本酒と答えた人が全体の7割だとか。お正月気分をぐんと盛り上げるイメージがあるのは、ビールやカクテルというよりは、やはり日本酒だろう。

日本酒は今や海外でも人気だ。
2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、注目されるようになった。
和食には、味はもちろん、器や盛り付けや空間のしつらえも含め、一貫した繊細な美意識が詰まっている。ヘルシーであることも和食ブームに火が付いた理由の一つだ。
そして、和食に合うお酒とくれば「日本酒」ということで、日本酒の輸出が目立って増加し始めたのだ。

2020年度の日本酒の輸出は、金額・数量ともに過去最高を記録し、輸出額は475億円(昨対比118.2%)。13年連続で前年を上回っている。
特に注目したいのは、カナダが数量・金額ともに急成長していることだ。

そんなカナダと、日本は有機酒類の輸出入に関して相互承認の提携をした。初の相互承認国である。これにより、有機酒類についても有機JAS制度に基づき輸出入できるようになった。台湾も続いている。

日本が誇る文化の一つ「日本酒」。異なる国で、異なるシチュエーションで飲まれるようになった日本酒から、今度は別の新しい文化が花開くかもしれない。