降りそそぐ太陽のエネルギーを植物が光合成によって栄養に変える。その植物を草食動物が食べる。その草食動物を肉食動物が食べる。人間はどっちも食べる。動物は食べるとフンをするし、寿命がくれば植物も動物も死んでいく。そのフンや死骸を分解するのがミミズやダンゴムシといった生きものたちや、目には見えない微生物。最終的には二酸化炭素と水に変えてしまう。栄養分は土の中へ戻る。その栄養をまた植物が吸収して成長して、サイクルは回り続ける。
と考えると、生きものは皆、運命共同体だ。みんな、みんな生きているんだ。ミミズだって、オケラだって、アメンボだって……ん? どこかで聞いたフレーズではないか? 年配の方はすぐにお分かりだと思うし、小学校の教科書に載っているので、誰もが知っている国民的な歌と言っても過言ではないだろう。「手のひらを太陽に」――作詞はやなせたかし、作曲はいずみたく。やなせたかしといえば、『アンパンマン』の原作者といったほうが分かりやすいかもしれない。
「手のひらを太陽に」は楽しく希望が湧いてくるような歌だが、実は、やなせ氏が食えなくて苦労していた時代につくった“詩”なのだという。漫画家一本で生きていきたいと思っても仕事がない。夜中に懐中電灯を手に当ててみると、こんなに落ち込んでいても血はものすごく元気に流れていて、生きているんだとつくづく思って涙が出そうになったという。
そんな思いが織り込まれ、「手のひらを太陽に」は誕生した。1961年の発表当初は大した反響もなかったものの、翌年NHKの『みんなのうた』で放送され、さらに教科書に採用され、世の中に広がっていった。親子で歌える、元気が出る励ましソングとして歌い継がれるようになった。東日本大震災の時にも歌われた。
そして、60年以上もの時を経た今、またしてもこの歌が大事なことに気付かせてくれる。まるでオーガニックライフの応援歌ではないか! そうだ、「僕らはみんな生きている 生きているからうれしいんだ」。しっかりと大地を踏みしめて立ち、声高らかに歌いたいものだ。「トンボだって、カエルだって、ミツバチだって、みんな、みんな生きているんだ、友達なんだ」と。
ちなみに、「手のひらを太陽に」が世に出た時、やなせ氏は40歳過ぎ。それでもさほど名は売れず、その後、『それいけ!アンパンマン』の大ヒットで超売れっ子になったのは69歳。遅咲きも遅咲き、老人のアイドルということで自称「オイドル」。94歳の天寿をまっとうするまで現役だったというのだから、その生きざまにも励まされるではないか。
(参考)
日本微生物生態学会アウトリーチサイト 「びせいぶつってなに?」
FRIDAYDIGITAL「手のひらを太陽に」誕生60年 アンパンマン原作者の作詩秘話 2021年2月12日