第73回 言葉について考える 「○○ファースト」って?

最近、ちまたで「○○ファースト」という言葉を見聞きする機会が増えた。

思えばこの「ファースト」という言葉が記憶に鮮明に刻まれたのは、アメリカのトランプ大統領の1期目の就任演説によってであった。
彼は、「America First」とゼスチャー付きで連呼した。
アメリカを一番に考える、つまりアメリカ第一主義、自国の国益を最優先するという立場の表明だった。

アメリカにおいてはこの言葉は過去にもスローガンとして使われた歴史があるが、今、まさに現在進行形の威力を伴ってかなり強烈に響く。

使えるワードと映ったのか、日本でもいろいろなところで使われ出した。
政治の世界でも、身の回りでも、「○○ファースト」とよく耳にする。

だが、こうしてオーガニックの話を書いている者としては、聞くたびに何だか居心地の悪さを味わう。
なぜなら、オーガニックの基本的な考え方は、命あるもの全てが幸せになることだからだ。

「ファースト」と言うと何となく響きがいい。
だが、日本語にすると「最優先」となるわけで、「○○ファースト」の「○○」にどんな言葉を入れても、どうもカサカサした違和感を覚えるのだ。

ミミズは「ミミズファースト」とは叫ばないし、モグラは「モグラファースト」と叫ぶことはない。
人間だけが「○○ファースト」と声高に主張する。

あちらこちらで共感を伴って浸透しているらしいこの言葉を聞くと、共生することが大事だと言うのがなんだか虚しくさえ思えてくる。

100年先なんかより今を何とかしてくれ、私たちを何とかしてくれ!という切羽詰まった思いも現実。
だが、今手を打たなければ100年先、確実に失われているものがあるのも現実だ。

目先の今と未来の話が入り混じって、自分の思考も頼りなくなってくる。
それでも踏ん張る足に思わず力が入るのは、何だか逆戻りしてしまいそうな怖さを感じるからかもしれない。

ミミズよ、モグラよ、君たちのことを忘れてはいない。
腐敗しかけた有機物を食べて糞をし肥沃な土にしてくれるミミズ、それを追いかけて地中深くまで穴を掘るモグラ。
これからも良い土づくりのために力を貸しておくれ。