第55回 有機の世界、世界の有機

「有機」「オーガニック」は、もはや国際的な共通語である。
しかし、その基準は国や地域によってさまざまで、共通ではない。
国の成り立ちも歴史も違えばお国柄も違うわけで、当然のことだ。

日本がそうであるように、海外の多くの国や地域で「有機」の名称表示を規制している。
独自の基準やマークを持つ認証制度があって、「有機」と名乗るためには決められた条件を満たさなければならない。

輸出入品についても同じだ。
日本から有機食品を輸出する場合は、その国・地域の有機認証を受けなければ「有機」と表示できない。日本で「有機JAS認証」を受けたものだからいい、というわけにはいかないのだ。
逆に、海外ではオーガニックと認められていても、日本の有機JAS法に基準が定められていない場合は、有機JASマークを貼ることはできない。

輸出入にかかる手間やコストは一つの障壁となる。
それを軽減してくれるのが「有機同等性」という制度だ。
国や地域で異なる有機認証を相互に認め合い、自国の有機認証と同等のものとして取り扱うというものである。

この度、日本とEU加盟国との間でこの「有機同等性」の対象が拡大された。
有機JAS認証を受けた「有機酒類」「有機畜産物」「有機畜産物を使用した加工食品」も、同等性を利用して有機(organic)と表示してEU加盟国に輸出できるようになったのである。

例えば日本酒。
今、国内での需要の落ち込みに対し、海外では「SAKEブーム」とも呼ばれるほどに人気なのだ。輸出は増え続けている。
軽くてフルーティーな、ワインのような味わいの日本酒がウケているのだ。
特にオーガニック志向の強い外国人には、有機農法で栽培された原料で造られたが日本酒が支持されているということで、「有機酒類」の有機同等性合意は、日本酒の輸出増加への大きなけん引力になりそうだ。

輸入品に関しても、例えばEUから有機ワインをこの同等性を利用して輸入できるし、日本国内で「有機」と表示して販売できることになる。
EUの有機ロゴマークも使えるわけで、随分とバリューアップ効果がありそうではないか。

ヨーロッパは何といってもオーガニック先進国だ。
「EU加盟国との有機同等性の範囲が拡大」と聞いて、「同等」という字面だけでなんだかちょっとうれしくなるのは私だけだろうか?