天然の藍は、麻、木綿、絹などの天然素材と相性がよく、よく染まる。
藍染の最盛期だった江戸時代、木綿が大量に安く生産できるようになり、藍染は庶民の生活の中に根付いていった。
野良着やはっぴ、赤ちゃんの産着やおしめ、蚊帳、手拭い、暖簾など、身に着けるものから暮らしの道具まで、生活の中のあらゆるものに藍染が使われていた。
それは、単に安価であったからというだけではない。
天然の藍には防虫効果や解毒や解熱、殺菌・抗菌、止血や消炎などの効果があり、古くから薬草としても用いられてきた。
人々はそうした藍の持つ効能を知っていたのだ。
これに学ばぬ手はない。
昔に戻れということではない。戻れるわけもない。
現代には現代に合ったやり方がある。
今の技術をもって、先人が苦労してやっていた重労働の部分を何とかできないものか。
データによる分析や管理、機械化など、今ある技術によって可能になることがたくさんあるのではないか。
というわけで、もう既にそうした取り組みは始まっている。
あおもり藍産業株式会社、そして、あおもり藍産業協同組合もその一つだ。
「こぎん刺し」の伝統文化を持つ青森で、一度は衰退してしまった藍を青森の新たな産業にしようと志を同じくして集まった仲間たちは、新しい自由な発想で過去と未来をつなごうとしている。
担い手不足や大量生産ができないという現実は、伝統技法が等しく抱える問題である。
その解決に、彼らは現代の新しい発想で挑み、藍染の独自技術を開発することで道を拓いた。
彼らのもう一つのチャレンジは、藍の持つ有効成分の抽出である。
「古くからの知恵と効能を証明するために、2014年から東北医科薬科大学と共同研究を開始し、『藍の力を現代化学で革新』しようと挑戦してきた」という。
そして、昔の人々が活用してきた藍に含まれる成分を、農薬不使用で100%天然由来のものだけで抽出することに成功したのだ。
現代人が悩まされているアトピー性皮膚炎やアレルギーをはじめ、さまざまな場面で効果を発揮する医薬品の開発に一役買うだろうと期待される。
ただひたすら守ることが全てではない。
温故知新、そして、そこから未来を考えることが、今を生きる私たちの役割だ。
先人が持っていなかった技術が今の私たちにはある。
先人の知恵から学びつつ、時代に合わせてしなやかに変えながら、次の時代へとつないでいく、思えばどの領域でも同じことがいえるのではないか。
私たちのこれからは、地球のこれからだ。
持続可能な地球を育むことにつながる技術なら、そして、現代の悩みを解決し、未来へと渡せるものであるならば、こんなうれしいことはない。
問題だらけの現代だが、いつの時代も衣・食・住の中から何かがこうして動いていくのだと思わせてくれる。
人間も捨てたもんじゃない。希望はいいものだ。
参考:AOMORI AI&CO. https://aomoriai.com/