私たちの身近でチュンチュン鳴いているスズメが、今、絶滅が危惧されるほど急速に減少しているという報告が衝撃的であったため、前回に続いてスズメの話である。
「身近でチュンチュン鳴いている」というのは、もはや妄想なのだろうか……。
スズメは瓦の隙間や屋根の軒の隙間、鉄骨の隙間など、ほんの3~4センチもあれば入り込んで営巣できる。それだけに、誰もがその姿を思い描けるほどに人間の生活に密着して存在してきた生き物だ。
小さくて、ピョコピョコ、チュンチュンとなかなか愛らしい鳥だが、日本では「鳥獣保護管理法」によって、無許可で野鳥などの鳥獣を捕獲することを禁止している。
従って、かわいいからといってスズメをつかまえて飼うのは違法である。
「鳥獣保護管理法」、正式には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」という。動物愛護だけではなく、生物多様性や生態系の維持も含めた観点から定められたものである。
自然の一部である野生の動物を捕獲したり飼育したりすることは、人間が生態系をゆがめてしまう可能性がある。人間の思いだけで自然の在り方に介入してはいけないのだ。
ケガをしているとか、親からはぐれたヒナを保護する場合などは、都道府県知事等の許可を得る必要がある。
ちょっとややこしいが、「鳥獣保護管理法」においてスズメは狩猟鳥獣(希少鳥獣以外の鳥獣)に含まれるので、狩猟免許を取得し、狩猟前に登録をして狩猟税を納付すれば、法に定められたやり方によって狩猟できる。この場合、とったスズメは焼いて食べてもいいのだ。
スズメは雑食性で、都会のスズメはパンやお菓子のくず、生ごみまで何でも食べる。
農村地帯で暮らすスズメは、イネ科を中心とした植物の種子や虫を食べる。
農家にとっては、春先には苗の天敵である害虫を食べてくれるので大助かりの益鳥だが、秋には、熟した米ばかりでなく、籾の中のミルク状の米も吸ってしまう害鳥に変身する。
スズメが変身するわけではなくて、人間側の扱いが変わるのである。
害鳥となったスズメを追い払うために、「かかし」が立てられ、「鳥追い」などの風習も生まれたわけで、スズメに言わせればなんとも勝手な話である。
日本では、スズメは鳥の大きさを比較する場合の基準となる基本種とされ、「ものさし鳥」と呼ばれる。そんな立派な働きもしているのだ。
害虫を食べてくれるスズメがいなくなると農業への影響は大きい。農業のやり方も変わるだろう。
害虫も益虫も害鳥も益鳥もみんな裏表の関係で、あれがいなくなれば、これもいなくなる。これがいなくばれば今度はあれがと連鎖していく。一度失ったものを取り戻すのは容易なことではない。
昔の風景を懐かしみ、郷愁に浸っている場合ではないのだ。